よう、ルーク。元気にしてるか?
こっちはいつもの眠れない夜を、まどろみの中で過ごし終えたところだ。
長い夜がもうすぐ明ける。そして昨日と同じような1日がまた始まるだろう。
花壇の花々に水をやって、剣の手入れをして、ついでに少し稽古もして、
シャワーで軽く汗を流した後、音機関の雑誌を読みながら朝食を摂る。
それから、屋敷のメイド達に軽口をたたいて、貴族院に少し顔を出して、
おっと。その前に、陛下のご機嫌伺いと、ブウサギ達の散歩があったよ。
後は・・・あれだな。陛下のお忍び歩きに付き合ったり、買い物に行ったり、
シェリダンの職人達やノエルに、最近の音機関事情の話を聞きに行ったり。
(お前、そればっかだな、とか言うな!)・・・・まぁ、そんなところか。
でもたった1つ、あの頃と決定的に違う事がある。
ルーク、お前がどこにもいない。
それが俺にはまるで、長い長い夢を見ているように感じられる。
お前が俺の目の前からいなくなってから、もうすぐ2年が経とうとしているというのに。
あの頃は、一緒にいるのが当たり前のように思っていたからかな。
以来、ぽっかりと自分の身体の一部を失ってしまったかのようだよ。
底なしの不安に駆られて、自分の外郭が滲んでいくような気すらする事がある。(全く俺らしくもないが。)
それでも俺は今日もこうして生きている。
なぁ、ルーク。
こうして俺がお前にこうやって愚痴っている今でも、
お前はこんな情けない姿の俺の事を、どこかで笑っているか?
あの憎まれ口を聞きたいと思うなんて、俺もとうとう末期かな。(なんてな。)
でもあのままさよなら、だなんてそんな事、俺は絶対許さないぞ。
これだけ人を待たせて、「うぜー」とか言いながら平然と現れた日には、
一発殴ってやらないと気が済まないからな。
たとえその日が来るのが永遠のように感じられようとも、
たとえその日が来るのをみんなが諦めようとも、
たとえみんなの記憶が忘却の彼方に追いやられようとも、
たとえそれがかなわぬ夢だと誰かに言われようとも。
だって約束したからな、ルーク。お前は必ず帰ってくると。
だから俺はその言葉を信じる。
だから俺は今日もこうして生きているんだ。
どんな姿になっててもいい。必ず帰って来いよ。ずっと待ってるからな。