まるで、深い深い海の底へ自分が沈んでいく気がする。
暗い。どこまでも、どこまでも暗い闇。
ここには光も届かない。
生まれてきたことに意味などない。存在する価値も無い。
誰も僕など必要としていない。僕は“奴”の代わりにもなれない。
この世で無駄な存在。僕は僕である事を呪う。
ここに留まる事も、オリジナルの事も、そしてアイツの事も。
永遠に光に当たる事もない。暗い暗い、どこまでも続く無限の闇。
汗ばんだ仮面を外すとシンクは、それを思いきり床に叩き付けた。
ガシャン、と大きな金属音がして2,3度転がったそれは、何周か回転を終えるとまるで何事も無かったかのように、部屋の隅に落ち着いた。
シンクは今日偶然に会ってしまった、二代目イオンの、聖人君子の様な顔を思い出していた。
自分と同じ顔のアイツ。けれどアイツのいる世界は、こんなにも自分と違う。 誕生した時の差なんてきっと紙一重だったに違いないのに。
ともすればアイツが僕で、僕がアイツだったかもしれないのに。
─何故僕だけがこんなにも苦しい。─
部屋の明かりも点けずにシンクは、外灯の光で窓にぼうっ、と白く浮かび上がった自分の顔をいつまでも見つめ続けていた。