DropsⅢ vol.5

ED後の話

屋敷の玄関付近にある応接間に場所を移して、ピオニー達4人は向き合ってソファに座っていた。
アスターは別の仕事が詰まっているので、すみませんがこれで、と、自分が話し終えると早々にまた外出していった。
お好きなだけご滞在下さい、と言われたのでとりあえず座ってはいるものの、皆別々の事を思案している様子で、 先程から誰一人として口をきこうとはしなかった。


「・・・だからナタリアは呼ばれなかったんだね。」
とうとう沈黙に耐えられなくなって、アニスが口を開いた。
その問いにジェイドも答える。
「ええ。恐らく、伝えるか伝えないかの判断は、私達に委ねられた、と解釈するべきでしょう。」
「でもあのお姫様が冷静にこの事実を受け止められるかね?」
ピオニーが問う。
「彼女は一国の王女です。事実は事実として受け入れるでしょう。しかし」
ジェイドは続ける。
「彼女も一人の人間です。そもそも“彼”自身が何故、私達を拒絶するのか、あれきり自分から行方知れずになって、私達に何も言わないでいるのか、 “彼”が今、何を考えているのか、その辺りが解らないと彼女も動きようがないと思います。いえ、恐らく動けないでしょう。」

「それはお前も一緒じゃないか。」
と、にべもなくピオニーはジェイドに言い、で、どうするんだ?と聞いた。
「・・・私が“彼”に会ってきます。」
「やっと言ったか。よし解った。そこは任せよう。俺はナタリア姫に伝える役目を請け負うとするか。」
「では、僕はダアトに戻り教団内部の、反組織に属する人物を特定するように、トリトハイム大詠師に進言しておきます。リーダー格の人物は、恐らく教団内の人間だ、と思いますから。」
そうフローリアンがきびきび答えると、アニスは驚き、その後すぐに頷いた。
「私も・・・導師のお手伝いをします。導師が直接表立って動くと、何かと危ないので、出来るだけ私が動くようにしますね。」
「そうして下さい、アニス。あなたなら心配する必要もないですからね。」
いつもの調子に戻ってジェイドが言った。

「ようし。そうなったら各自、自分の役目を果たしてくれ。俺はジェイドが戻るまでケセドニアに隠れて滞在するから、緊急に何かあったら、領事館の方へ伝言をくれ。」
「わかりました陛下。」
4人はお互い頷き合うと、別れの挨拶をし、それぞれの行くべき場所へと散っていった。
頼みますから、私が戻るまでは領事館で大人しくしていて下さい、と言い残して立ち去ったジェイドの言葉もすぐに忘れたように、ピオニーはううーん、と一通り伸びをして呟いた。
「さぁて。ナタリア姫はベルケンドだったよな。早速呼び出して、あの店で一緒に飯でも食うとするか。」
颯爽と歩き出したその後姿は、あっという間に人込みの中に紛れて見えなくなっていった。
<終。 ─Ⅳへ続く─>

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