迷い猫 vol.6

アリエッタとオリジナルイオンの話

もうすぐイオン様に会える!
導師復帰の日にちが正式に決まり、その日を心待ちにしていたアリエッタの胸は張り裂けんばかりに高鳴った。
これでやっとまた、イオン様を傍でお守りする仕事が出来る。


しかしアリエッタの導師守護役復帰の命は、二度と来ることはなかった。
彼女は新しくヴァン直属の部下として、ローレライ教団第三師団長に栄転となり、後任には神託の盾騎士団研修時代からうまの合わなかった年下の少女、アニス・タトリンが就くことになった。そして彼女の横には、すっかり体調の良くなったらしい、導師イオンが立っている。

「どうして・・・どうして・・・?!イオン様ぁっ!!」
アリエッタには訳がわからない。突然解任されたことも、まるで他人行儀になってしまったイオンのことも。
「何故イオン様の隣にいるのが私じゃないの・・・?」
イオンの態度は、アリエッタのことなど、まるで覚えていないかのように感じる程によそよそしい。
「こんな事って・・・。」
アリエッタは呆然とした。
「イオン様・・・。」

アニス達導師守護役と導師一行の姿が見えなくなってから、どの位の時間が経ったのだろうか。
気付くとアリエッタは礼拝堂の前の芝生に座っていた。大分長い間座っていたのか、制服のスカートの部分に水気が染み込んできている。

あの日から、全く突然に引き離されてしまった。
あの時イオン様も泣いていた。
きっとイオン様が命じたことではないのだ。
でもあのよそよそしさはどうして?
アリエッタの知らない所で何が起きたの?
わからない。わからないよ、イオン様・・・。
アリエッタはこれからどうすればいいの・・・。
アリエッタ、イオン様がいなくちゃもう生きていけないよ・・・。

考えても考えても、解けない謎だった。
日に日に疑問は膨らみ、やりきれない想いは行き場を探していた。
・・・あの子のせい?
胸のうちに黒い感情がむくむくと湧き上がって来る。
アリエッタのその感情は、次第に今はイオンの傍にいる、アニス・タトリンに向けられていくようになった。
アニス・・・許せない。イオン様を奪うなんて。
イオン様をアリエッタに返して!
<終>

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