当時その教官の下でも何か、思い出したくない出来事でもあったのかな。
急に黙ったティアを見て、ルークはそんな事を考えていた。
何か言いたそうに、でも言えなそうに、こちらを見ているティア。
─慰めてやりたい。俺がティアの辛い気持ちを少しでも拭ってやれたら─。
とルークはいつも思う。
しかし彼女はそれを望まないだろう。彼女の身体が瘴気を吸って、生命を蝕んでいると知った時も、俺がただ心配して止めさせるのではなく、認めてくれた事が嬉しかった、と以前に彼女は言っていた。
自分の弱さと向きあい、強くあり続けたい。兵士として、人間として。
彼女はそうなりたいという自分の目標を、常に自分に課している。
自分が消えることの恐怖に怯える俺なんかが、彼女の苦しみを取り去ってやる事なんて出来やしない。
ルークは何もしてやれない自分が腹立たしかった。
強くなりたい。彼女を包み込める位に、大きい人間になりたい。
そんな思いとは裏腹に、焦りばかり先に立ってしまう。
そして震えていた自分の両手を見て、また自己嫌悪に陥りそうだった。
相手の事を思い合うからこそ、触れられない領域が、この二人には常にある。それは傍から見ている側にしてみれば、気持ちがわかるだけに歯痒い。 しかし言葉にはならなくても伝わる、お互いの存在の大切さがあった。 ティアの強さはルークにとっては、いつも励ませられるものであったし、ルークの素直さは、頑ななティアの心を動かす程のものであったからだ。
ただお互いに声に出してそれを伝え合ってはいなかった。
時にルークは、ティア以外の女性達、ナタリアやアニスを心配したりていたし、ティアも周りの視線の照れ隠しからか、つっけんどんにルークを突き放すこともしばしばだった。
上手く言葉に出来ない─。
それもこの二人に共通してある、大きな、そしてやっかいな部分の一つだった。 おまけに、二人とも、必要以上に照れ屋だった。