北極星 vol.4

オリジナルイオンの話

「導師はこの頃、皆様とお食事なさる時は、とてもいいお顔をするようになりましたね。」
いつもこの席をセッティングしてくれている、導師付きの教団給仕がヴァンに向かって話しかけてきた。
「─そうだな。」
ヴァンもこの所そう思っていた所だった。以前のような硬い表情が、こうしてアリエッタとヴァンを交えた、たまの食事会の時だけは和らぐようになっていた。普段自分がいない時も、暇を見つけては彼女を構ってくれているようだ。こうして並んで笑いあっているのを見ていると、本当の兄妹のようだった。


「どこぞの兄妹も、他人から見ればこの様に見えてくれているのだろうか。」
ユリアシティに放りっぱなしのヴァンの実妹“ティア・グランツ”は、その事で拗ねて性格が曲がることもなく、今では立派に成長した。自分を慕って神託の盾騎士団にも入団したので、副官のリグレットを家庭教師に付けている。
(私にはやるべき事がある。今は、それを最優先でやってゆくしかないのだ。すまぬ、ティアよ。)
ここにはいない妹の、たまに再会した時の満面の笑みを思い出し、ヴァンは密かに侘びた。

「導師までそのような!」
突然湧いた大声にふと我に返って見やると、先程までヴァンと話していた給仕が、イオンとアリエッタの腕を掴んで焦っている。どうやらテーブルマナーが面倒で、二人とも手掴みで食べ始めたらしい。
「イオン様。あなた様までアリエッタと同じレベルになってどうしますか。」
静かに諭したヴァンに、イオンは少しだけ小さくなった。
「─今日だけですよ。あまり給仕を困らせると、今後の食事会は取止めにしますからね。」
「ヴァン!」
わぁーい、と喜んでアリエッタと食べ始めたイオンの顔は、まるで年相応の少年のようだった。

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