「この子達の体毛はとても暖かい・・・です。」
諸国を周った職務の帰り、ダアト近くの野原で休憩していたローレライ教団一行は、アリエッタに常に付いている妖獣“ライガ”と“フレスベルグ”が、彼女を囲んで円になっているのを離れた所で怖々見ていた。
しかしイオンだけはスタスタと近づき、アリエッタの横にぽふっ、と寝転んだ。戦闘の時はとても凶暴なこの妖獣達も、彼女が自分の身よりも大切にしているイオンには心を許しているようだ。
「本当だ。僕が普段使っているベットよりはるかにいいよ。」
うふふふ、と嬉しそうに笑うとアリエッタは言った。
「この子達は、本当は、優しい子なの・・・です。でも他の生物への接し方が解らないから、突然出会うとつい、攻撃してしまう・・・です。」
アリエッタは愛しそうに2頭の妖獣を撫でた。
獣と人間が同じ世界で生きるには、居場所を分けて生きるしかない。それを脅かす時に争いが起きる。人間同士ですらそうなのだ。そしてそれを解っているからこそ、ただガムシャラに獣を襲うな、とは彼女は言わない。むしろイオン達人間を、彼らの攻撃から守ってくれている立場にいる。でも本当は、人間から彼らを守りたいに違いない。
「でもアリエッタ、この子達やライガママには、沢山生きて欲しい・・・です。」
彼女のような純粋な心や優しさを持った人間が、今の世界に一体どれだけ残っているのだろうか。少なくともイオンは彼女とヴァン位しか身近に知らない。
「いつか妖獣達も一緒に暮らせる世界が来るといいね。」
その日まで自分は生きていられまい。そもそもそんな日など来る訳がない。どちらかの種族が完全に滅びるまでは。
と、イオンは思っていたが、アリエッタにはそう言った。
「─はい・・・です。」
嬉しそうに笑ってそう返事をしたアリエッタは、今度はイオンの眼ををじっ、とみつめ直して言った。
「イオン様は、アリエッタを大きく包んでくれる、とても大切な人・・・なのです。イオン様はまるで、この子達の様に温かい・・・です。」
その時イオンはアリエッタに光を見た気がした。
まるで明けることのない夜の闇の中に、どこにいても同じ場所で輝き続ける北極星の如くに。
<終>