やがてルークは、閉じていた眼をゆっくりと開いた。
いくら見回してみても、辺りには何もない。
さっきまでと同じ風景が、同じ様に映っているだけだった。
あれは現実だったのか、それとも、夢か幻だったのか。
ルークは自分の手をじっ、と見つめた。
あの感覚が嘘だった、なんて到底思えない。
しかし、今となってはルークには、それはどちらでもよいことだった。
不安定だった心は、充足感と幸福感で一杯に満たされていた。
さっきまで自分に貼り付いていた不安は、跡形も無く消え去っている。
自分の身体についた、「他ノモノ」の残り香がふいに鼻を掠めた。
(幻なんかじゃない。)
ルークは自分の胸に手を当てて、幸せそうに微笑んだ。
(だって俺にはその刻印が、こんなにもはっきりと刻まれている。)
その姿はまるで、永遠というものが存在するかのように、それに向かって強く祈っているようにも見えた。
ルークはゆったりと歩き出した。 あんなに激しく吹いていた風は、いつのまにか止んでいる。
頭上には、闇の中一面に、音譜帯のカーテンがいつもよりも一層輝きを増して広がっていた。
<終>