DropsⅩ vol.3

ED後の話

家紋で封印された封筒の中身をやっと読み終わって、ピオニーは部屋で一人、微笑んでいた。
「良かったな、・・・ネフリー。」
いつものようにブウサギ達に散らかし放題荒らされた自室のソファに寝転がって、ううーん、と大きく伸びをしたピオニーは、自分の膝の上に乗っかってきたまま動かない1匹のブウサギを抱きかかえると、その鼻頭に自分の鼻頭を擦り合わせた。


「お前が俺を慰めてくれるのか?」
コツコツ、と叩かれた扉に向かってピオニーが返事をする前に、それを開いて中に入ってきたジェイドはその様子を見るなり、
「・・・ネフリーに何をしているのですか。」
と冷たく言い放った。

「いいだろぉ?実物とはもうこんな事も出来ないんだからさぁ。」
拗ねたようにピオニーは言うと、何か様か、と問うた。
ホドへの助成金承認の書面をガイに渡した旨の報告と、彼からの返礼を陛下にお伝えしようと思ったのですが、とジェイドは言い、
「その前に、陛下が錯乱されて、ブウサギ達と一緒になって部屋を荒らし回っていらっしゃったら困る、とふと考えまして。」
と続け、両脇に抱えていた警護棒と、凶悪犯を取り押さえるための捕り物棒を握ってピオニーに見せた。

「・・・はっはっは。そんなガキ臭いこと、俺がするかよ。」
と、押さえた声で言ったピオニーに、
「はっはっは。それを実行に移すのがあなたという人間ですからねぇ。」
と、ジェイドは明るく返した。
ちぇ、と言って案外素直に引いたピオニーの様子にジェイドは、
「おや。今日は反論を止めるのが早いのですね。さすがの陛下も、今回の件は流石にこたえたのでしょうか。」
と言って続けた。

「・・・全く。陛下がモタモタしているからですよ。まぁ私個人としては、あなたと身内にならずに済んで、心からホッとしていますがね。」
「おま・・・!モタモタじゃねえよ!俺は彼女の立場を考えて、だなぁ・・・」
「解っていますよ、そんな事は。」
「解ってんなら、人の傷口をわざわざ抉るようなこと言ってんじゃねぇよ。」
「私もルークの件では、あなたに大分イジられましたからねぇ・・・。
こうして“お礼の一つ”でも返さないと、私も気が済まないのですよ。」
「・・・・・・。」
はぁーっ、といつもジェイドがするような深い溜息をついてピオニーは、すぐ側にいたもう一匹のブウサギを抱き上げて、

「お前の実物はホント、可愛くないよなぁ?可愛い方のジェイドォ?」
と話しかけた。
それに対して実物のジェイドが言い返す。
「それは陛下も同じだ、と思いますが?」
それを聞いたピオニーは、むぅ、とふくれ面を見せて言った。

「お前だってその歳で独り身のくせによぅ。しかもお前なんか、モタモタどころか、そっち方面ではボヤァ~~~ッとしてるくせに、人のことをとやかく言えんのかよ。」
「・・・ボヤーッとしている訳ではありませんよ。あまりその方面に興味が向かないだけ、です。人の行動に、変な擬態語を当てはめないで下さい。
大体、一般人である私と、一国の皇帝である陛下が、そもそもが同じ土台な訳がありませんよ。どうするんですかこの先。後継者もいない、ましてや未だ正妻すらいない皇帝などと、マルクト帝国の名が泣きます。」
「いいじゃねぇか。たまにはそういう皇帝がいたってよぉ。しかもキムラスカにも、一生独り身っぽい姫がいるじゃねぇか。よーし、もうこうなったら三人で、独身貴族連盟でも作るか、ジェイド?」
ピオニーがほとんどヤケクソ気味にそう言い返すとジェイドは、あ、そうでした、と言い、

「そのキムラスカの姫の元に、いずれ伴侶となるであろう方が、どうやらやっと戻ってきたらしいですよ。」

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