Stalwarts vol.8

六神将/リグレットの話

執務室の狭い空間に一瞬にして緊張感が漂う。
構えて立っているリグレットと椅子に腰掛けたままのヴァンとの距離は、ほんの2mも離れていない。
どんなに射撃が不得手な者でも、この間隔で狙いを外す事はまず有り得ないだろう。
しかしヴァンに向けられている二つの銃口は、微かに上下に揺れ、明らかに安定感を欠いていた。
互いに微動だにせず、見つめ合った二人の間に重い沈黙が流れ続ける。
「・・・・・・。」
それは実際には、ほんの数秒の出来事であったが、リグレットにはとてもとても長い時間の様に感じられた。


「ふふ…。」
やがて、鋭い眼差しでリグレットを凝視していたヴァンがおもむろに含み笑いを発した。
そうすることで自ら緊張を解いたのだった。
「?!」
張り詰めた空気が緩み、既に口の端に微笑すら湛えているヴァンの余裕を感じたリグレットは、
己の動揺を隠すように更にヴァンを睨みつけた。
それを察したのかヴァンは、より一層大きく笑いを声に出した。

「何が可笑しい!」
自らを叱咤する為に大声を出して、リグレットは両手に構えた拳銃を握り直した。
ははは、と尚も可笑しそうに笑い続けながら、ヴァンはリグレットに言った。

「…いや、すまぬな。お前と初めて対峙した時の事を思い出してしまったのだよ。」
そして椅子から立ち上がると、真顔に戻ってリグレットを見た。
「お前が銃口を向けたままでいる、という事は、少しは私の返答を聞く気があるという事なのだろう。
お前にはそろそろ、私の全てを話しておかねばなるまいと思っていた。」

それを聞いたリグレットは、思わずはっとした。
己の心底にある、自分に僅かな迷いを生じさせている理由が、ヴァンに対しての何かしらの期待であったことを、
今初めて気付かされたからだ。
(銃口を向けたのは私の本意では無い…。)
密かに自分にそう問いかけてみるが、その真意ははっきりとは分からない。
リグレットが自問自答している間に、ヴァンは机の横に軽く寄り掛かり、そしてゆっくりと話し始めていた。

「…その始まりは、全てホドからだった。」

Page Top